西村と考える|世界と資産の現在地
AI BUBBLE / 2026.07
01
AI BUBBLE ─ 特別編
この大問題は、どこまで引き延ばせるのか
AIバブル ─「延命装置」と「剥落の引き金」を分解する
そして、延ばせるのか?
水位で見る / 時間軸で見る / 資産の置き所で考える
© 2026 Naoki Nishimura
02
Conclusion / 結論を先に
延ばせる。ただし"利益と簿外金融が続く限り"。金利上昇(=石油インフレ)とROI未達がぶつかった瞬間に、構造は巻き戻る。関門は2028年の借換え。
= ROI未達:投じたお金に見合う稼ぎが、まだ返ってきていないこと。簿外金融:銀行や市場を通さない"見えない借金"で資金を回すこと。
延命装置
① 主役の実利益
② 加速する設備投資
③ 簿外に逃がす私募クレジット
剥落の引き金
① 投資と売上の断層
② 金利上昇
③ 2028年の借換えの壁
期限
2028年
2026後半に痛みが可視化 →
2028年に借換えが集中
見るべきは勢い(温度)ではなく、水位(高さ)と時間(期限)。
03
株式の水位
株の水位は、ITバブル頂点に肉薄している
= CAPE・PERとは「株価が"利益の何年分"で買われているか」を測る物差し。数字が大きいほど割高。
41
CAPE(景気循環調整後PER)
史上最高は1999年の44.2
20.4倍
予想PER(FactSet 6/30)
10年平均19.0を上回る
高さは1999年並み。ただし"中身"は違う(→次章)。
出典:Robert Shiller データ(multpl/ycharts)、FactSet Earnings Insight。
04
延命の燃料
まだ燃料がある ─ 延命を支える3本の支柱
①実利益
Nvidia売上は前年比+62%。予想PERは20倍まで低下=株価より利益が速い。将来の利益で今の株価を説明できる。
②加速する投資
2026年$7,250億(+77%)、2027年$1兆超。供給網の売上が回り続ける。
③簿外金融
ABS・SPVでFCFに傷を見せず調達。私募クレジットが主な出し手。
= 別会社に借金させ、自社の決算を汚さず資金を回す方法。私募クレジット=銀行や市場を通さない相対の貸し手。
中心部はキャッシュを生む。だから"長く"延ばせる。
05
埋まらない断層
投じる額と、返ってくる額が噛み合わない
ROI95%の組織が生成AIで「測定可能なリターンはゼロ」(MIT メディアラボ)
= ROI=投資対効果。出したお金がどれだけ返ってきたか。
OpenAI年間売上 約
$200億 に対し、
8年投資コミットは
$1兆4,000億(8年累計)
= 8年で使うと"約束"した総額(2025年11月時点。2026年2月に「2030年まで約$6,000億」へ下方修正)。1年分の売上とは桁が違う。
構造循環金融が
"実需の錯覚"を生む懸念(GMO「ITバブルの循環金融を想起」)
= 身内どうしで出資と発注を回し、需要があるように見せる状態。
外の顧客が払う売上に変わらなければ、循環はどこかで切れる。
06
延命の期限
止まれば"景気イベント"。そして2028年の壁
= 借換え:期限が来た借金を、新たに借り直して返すこと。グラフは"最も返済力の弱い会社"の借金が期限を迎える額で、AIインフラ債務がその主因の一つ(S&P Global)。
80%2025年の米国株上昇のうちAI関連が占めた割合
74%Q1'26の米GDP成長のうちAI投資由来【推計】
7.3%Nvidia1社がS&P500に占める比率
金利上昇(=石油インフレ)が、この壁を高くする最後の引き金。
セクター調整では済まない。止まれば景気の話になる。
07
1999 vs 2026
中身は当時より実体。だが、壊れ方が違う
ITバブル 1999
AIブーム 2026
株式の水位(CAPE)
44.2(史上最高)
41(肉薄)
主役の利益
ほぼ無し
実在(Nvidia +62%)
資金の出所
ベンチャー株式
債務・私募クレジット
崩れ方
株価から
債務・担保から
= ベンダー金融:自社製品を買わせるため、自ら資金を貸す商法。2008年型:借金と担保の側から崩れる(リーマン危機と同じ入口)。
崩れるとすれば1999年型(株)ではなく2008年型(信用・担保)。BISも「株式調整のマクロ影響は過去より大きくなりうる」と警告。
08
結節点 / 3本柱の連鎖
3つは別の話ではない ─ 同じ一本のロープの、別の結び目
= BISは各国の中央銀行が集まる"中央銀行の中央銀行"。その公式報告がこの連鎖を名指しした、という重み。
BIS(国際決済銀行)年次報告(6/28)が、この連鎖を名指しで並べた。「旺盛なリスク選好と高まるマクロリスクの緊張は、急激に巻き戻る恐れがある」。
石油が解ければ全部緩む。締まれば、全部締まる。
09
結び
だから、資産の置き所を
"今"考える
これは特定銘柄の推奨ではない。資産をどこに置くかという、構造の話。
本資料は各機関の一次資料(BIS・IMF・FactSet・Shiller データ・S&P Global 等)に基づく分析であり、投資助言ではありません。推計・予測には【推計】【予測】を明記しています。
© 2026 Naoki Nishimura