CPI予測V0.7 — 5/29経産省石油統計速報4月分でナフサ販売▲35.6%・ガソリン▲10.9%が確定し、上流ショックが予測通り展開していることを実証。①は確率ゼロにつき参考表示、②③④Dの4シナリオで運用。3要素×全月次でCFR起点→真水→公式→数量→金額→変動費しわ寄せまで一気通貫。7月食品値上げ2,269品目(日経5/29)で価格転嫁の実証ステージに入る。
日本型挙動: 数量変化 ≈ −真水CPI(賃金+2.5%固定の保守前提)。2014・2023・2026/3で実証済。
市場は「米イラン合意期待で原油先物$108→$99下落=物価も落ち着く」と読む。だがこれは先物の見かけ。IEEJ実測では現物Dated Brentと先物に$35の乖離が生じ、日本が買う現物は割高。さらに船賃(前年比2倍)・保険(運賃の25-35%)・喜望峰迂回(+10-14日)がCFRに上乗せされ続ける。差し引きで真水CPIは下がるどころか+0.4〜1.3pt上方修正。封鎖が長期化するほど迂回が常態化し、修正幅が拡大する。
ショック由来(電気ガス)が夏に反転上昇し、構造由来(水道)が原油と無関係に独立進行。どちらも固定費=削れないため、3要素モデルで変動費へのしわ寄せが想定以上に深刻化する。④ピーク時で変動費−23.9% / 集中費目−25〜30%級(次セクション)。
最頻シナリオ②で全体数量−10.1%は穏当に見えるが、固定費が削れずインフラ上昇で固定費が膨張する分、変動費へのしわ寄せは−19〜20%、自動車購入・教養娯楽・交際費など特定費目では−30%超。家計は払う金額を変えないまま、家族旅行を中止し外食を減らし車の買い替えを凍結する — 「戦時経済型応答」。
強み=構造把握(CFR→波形→3要素の機械的展開、実測値でキャリブレーション)。弱み=政治・心理・グローバル。上記5項目は本体予測に対する±3〜5ptのリスクバンドとして読む。V0.5以降、③政治判断のうち「補助金復活」が現実化し政策クサビに正式編入された(V0.6でも7-9月補助を本体に反映)。
本予測は以下の4層を順に積み上げて公式CPIを導出する。各層は独立に検証・更新できる。
| 項目 | 数値 | 出典・根拠 |
|---|---|---|
| 2026/3 真水コアCPI | +2.0% | 総務省3月CPI。政府発表コア+1.8%に補助金寄与−0.2ptを戻した「真水」値 |
| 4月東京都区部コアコア | +1.9% | 全国起点+2.0%とほぼ整合(検証済) |
| 2026/2 日銀企業物価PPI | 182.9 | 上流価格の起点指標 |
4月公式CPI実績は+1.4%(総務省5/22発表、市場予測+1.7%を下回る)。一見V0.3予測+2.5%から大きく外れたが、政策効果を戻すと整合する。
| 要素 | 寄与 | 出典 |
|---|---|---|
| 4月公式CPI(実績) | +1.4% | 総務省。エネルギー−3.9%(電気−2.6/ガス−5.1/ガソリン−9.7) |
| 政策効果の押下げ | −1.08pt | 暫定税率廃止+電気ガス補助+高校無償化(私立授業料−68.8%) |
| 実勢(真水換算) | ≈+2.5% | 1.4+1.08≈2.5 = V0.3予測と一致 |
本ダッシュボードの公式CPIは全シナリオで2026/4に+1.44〜1.47%に着地し、実績+1.4%とほぼ一致(◆アンカー)。これが二層構造(真水−クサビ)の妥当性を実証する。
供給ショックは上流から下流へ4-6ヶ月かけて段階伝播し、各層で減衰する。係数は実際の値上げ発表で裏取り済み。
| 階層 | 値上げ率 | 実測例(出典:日経・各社発表) |
|---|---|---|
| 上流(原油・ナフサ・エチレン) | +75〜100% | エチレン$350→$700、ナフサ$600→$1,061。エチレン12基中6基減産・フル稼働3基(JPCA稼働率68.6%=1996年来最低) |
| 中流(化学・樹脂・包材) | +30〜75% | 信越塩ビ累計+30〜40%(2回目)、三菱ケミG酸化エチレン+130円/kg、東レ全品目緊急値上げ+サーチャージ(転嫁1ヶ月化) |
| 下流(食品・建材・日用品) | +15〜40% | カネカ断熱材+40%、サンゲツ建材+18〜30%、TDB食品6月906品目・7月952品目 |
| サービス(外食・交通) | +5〜10% | JR東+7.8%(普通)/+12%(定期)、マック・すき家 |
伝播弾性: 上流+100%上昇 → 真水ピーク+6.1%(②V0.6)。弾性係数 ≈ 0.095(各層の重み付け平均)。
弾性係数は、層別の名目通過力(0.095)を起点に、原料費比率・転嫁率で減衰させ、②シナリオ着地で実現弾性(0.061)に収束する。0.095は減衰前の上限、0.061は着地後の実現値で、両者は同一プロセスの始点と終点。
① 層別の名目通過率(D欄の値上げ率を上流=100%基準に換算)
| 上流(原油・ナフサ・エチレン) | +75〜100% | 通過率 1.00 |
| 中流(化学・樹脂・包材) | +30〜75%(中央52%) | 通過率 0.52 |
| 下流(食品・建材・日用品) | +15〜40%(中央27%) | 通過率 0.27 |
| サービス(外食・交通) | +5〜10%(中央7.5%) | 通過率 0.075 |
② CPIバスケット全体での加重(瞬時・物理上限)── 非感応品目47%は通過率ゼロで母数に算入
| 層 | 通過率 | CPIウェイト | 寄与pt |
|---|---|---|---|
| 上流直撃(ガソリン等エネ一部) | 1.00 | 0.045 | 4.50 |
| 中流経由(素材依存工業製品) | 0.52 | 0.080 | 4.16 |
| 下流(食料・日用品・被服) | 0.27 | 0.270 | 7.29 |
| サービス(外食・交通) | 0.075 | 0.140 | 1.05 |
| 非感応(住居・教育・医療・通信等) | 0.00 | 0.465 | 0.00 |
→ 瞬時加重弾性 0.170(=ショックが100%瞬時転嫁された場合の物理上限)
③ 実効化 ── 原料費比率(価格に占めるショック原料の割合)× 転嫁率(値上げに乗る割合)で減衰
| 層 | 瞬時寄与 | 原料費比率 | 転嫁率 | 実効寄与pt |
|---|---|---|---|---|
| 上流直撃 | 4.50 | 0.90 | 0.95 | 3.85 |
| 中流経由 | 4.16 | 0.55 | 0.85 | 1.94 |
| 下流 | 7.29 | 0.35 | 0.75 | 1.91 |
| サービス | 1.05 | 0.13 | 0.60 | 0.08 |
→ 実効弾性 ≈ 0.078(中間値)
④ ②シナリオ着地 ── 0.095と0.061の関係
シナリオ別実現弾性(各ピーク÷100): ②0.061 / ③0.097 / ④0.121 / D0.187。CPIウェイト・原料費比率・転嫁率はD欄実測レンジと総務省2020年基準ウェイト概数からの整合値。名目弾性は0.078〜0.095のレンジで説明可能で、本予測は保守側(下限寄り)で運用。
V0.5までは原料(FOB)+船賃+保険+迂回をCFR独立要素として真水を上方修正していた。V0.6では上流ショックを原油価格軌道で時間可変化し、CFRを原油軌道の一部として内包。封鎖長期化シナリオでは原油$135-170の高止まりが、CFR的乖離も含めてピーク水準と時期に表現される。
| 輸送要素 | 実測値 | 出典 |
|---|---|---|
| VLCC運賃(ピーク) | $423,736/日 | Baltic Exchange/LSEG(3月、過去最高) |
| VLCC運賃(現在) | 約$10万/日 | Lloyd's List(5月初旬、前年同期の2倍で安定) |
| 戦争保険料の比率 | 運賃の25-35% | 市場推計。平時0.1-0.15%→停戦後でも0.3-0.5%(S&P Global) |
| 喜望峰迂回 | +10-14日 | +3,500-4,000海里、実質船腹縮小(Paradox Intelligence) |
| 現物vs先物の乖離 | $35 | IEEJ。Dated Brent現物$144.42 vs 1ヶ月先物$109.27(4/7) |
係数の逆算: 船賃2倍 → CFRに占める輸送(約20%)×(2.0−1.0)=+20%上乗せ。うち旧V0.5で未織込の純増分を保守的に約1/3=上流+6〜7%相当と評価。V0.6では原油軌道に直接織込み済(弾性0.061)。真水+0.6pt(②)。封鎖長期化で迂回が常態化するため傾斜配分:
| シナリオ | CFR上乗せ(ピーク) | +水道 | 旧V0.5→新V0.6 |
|---|---|---|---|
| ① | +0.4pt | +0.03 | 旧V0.5 7.67 → 廃止(確率ゼロ)(+0.37) |
| ②最頻 | +0.6pt | +0.04 | 旧V0.5 10.14 → 新6.1 (−4.04)(+0.64) |
| ③ | +0.8pt | +0.06 | 旧V0.5 12.36 → 新9.7 (−2.66)(+0.86) |
| ④ | +1.0pt | +0.07 | 旧V0.5 15.57 → 新12.1 (−3.47)(+1.07) |
| D | +1.2pt | +0.08 | 旧V0.5 20.28 → 新18.7 (−1.58)(+1.28) |
4月実績−1.08ptを起点に、補助金スケジュール実数で月次設計。燃調2ヶ月遅効で夏にクサビ縮小。
| 月 | クサビ | 根拠 |
|---|---|---|
| 4月 | −1.08 | 暫定税率廃止+補助+高校無償化(実績) |
| 5月 | −1.0 | 補助なし期。再エネ賦課金値上げ(3.98→4.18円)で押下げ縮小 |
| 6月 | −0.85 | 燃調(原油LNG高)が6月使用分から反映開始→クサビ縮小 |
| 7月 | −0.7 | 電気ガス補助復活(電気3.5円/kWh)だが燃調上昇と綱引き |
| 8月 | −0.75 | 補助最大(電気4.5円)で一時クサビ深く |
| 9月 | −0.6 | 補助(3.5円)+燃調ピーク |
| 10月以降 | −0.35→−0.2 | 補助終了→エネ寄与プラス転→暫定税率廃止の恒久分(−0.2)に収束 |
出典: 首相官邸5/25-26(補正3兆円、7-9月補助5000円、電気3.5/4.5/3.5円)、経産省、エネチェンジ・selectra(燃調2ヶ月遅効・賦課金)。
| 分野 | 性質 | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 電気・ガス | ショック連動 | 燃調2ヶ月遅効で6月使用分から反映。4月エネ寄与−0.31ptが夏に符号反転(総務省は4月時点で「エネで+0.14pt拡大」と既に記録)。関電は燃調上限到達 |
| 水道 | 構造・別軸 | 原油無関係。2046年までに全国96%で値上げ必要・平均+48%(EY Japan等)。2026年も静岡市最大50%・秩父51%・下関20% |
| 通信 | 実績・原油無関係 | 4月実績+11.0%(前年値下げ剥落・端末高)。予測上振れ要因ではなく実績底上げ |
日本の家計は単価上昇時、名目支出を増やさず物量を削る。過去実証:
| 期間 | CPI | 実質消費 | 名目 |
|---|---|---|---|
| 2014/4-12(消費増税8%) | +3.1% | −4.4% | −1.0% |
| 2023/4-12(CPIピーク期) | +3.1% | −3.0% | +0.1% |
| 2026/3(直近実績) | +2.0% | −2.9% | −1.3% |
賃金前提: 名目+2.5%固定(保守)。1974年は名目賃金+32.9%で踏ん張れたが今回は固定 → 数量=−CPIを厳守。変動費しわ寄せ: 固定費46%/変動費54% → 全体−X%は変動費−X/0.54%に集中。インフラ上昇で固定費48%に膨張すると−X/0.52%へ悪化。
確率分布(oil_simulator 5/28準拠): ①5月末=0%(参考・廃止) / ②6月末30%(最頻) / ③7月末10% / ④9月末30% / D解放なし30%。合計100%。下振れ④+D=60%に悲観シフト。①除外の根拠: 5末まで数日・米発表でも開放に1ヶ月超→5月末開放は非現実的。「開放」は停戦合意でなく機雷掃海開始(物理的に中東直行が戻る時期)と定義。シナリオ別ピーク真水は②+6.1%(②) 〜 D+18.7% (旧V0.5は②+10.14〜D+20.28%)。各シナリオのカーブは確率変更の影響を受けない(確率は重み付けのみ)。
留保事項: (1)単価+10%超は1974年以来で前例なし、過去実例の単純拡大は要留保。(2)Dは数量=−CPIだと名目−4.1%に沈み日本型が破綻=臨界点として表示。(3)米イランMOU署名が本物なら②④Dの夏以降−0.2〜0.3pt下方余地。(4)未反映5項目(海外連動・心理増幅・政治・為替賃金・中東エスカレーション)は±3〜5ptのリスクバンドで式に非算入。